オーストラリアの大学が定める英語力の基準。複数の大学のポリシーを並べてみると、あることに気づきます。どこも、驚くほど似ているんです。
スコアの細かい数字が少し違ったり、ある大学では使える試験が別の大学では使えなかったりと、細部に差はあります。でも全体の構造は、ほぼ同じ木から生えた同じ枝と言っていい。元審査マネージャーのパートナーに言わせれば、「他大学のポリシーを参考にしている、というより、ほぼコピーしている」のが実態だそうです。
なぜそうなるのか。理由はシンプルで、新しい英語試験や資格を正式に認定するプロセスが、想像以上に大変だからです。リサーチレポートを書き、委員会に提出し、パイロット実施の計画を立て、結果を報告し、最終的にアカデミックボードで承認を得る。そこまでやってようやく「公式に使える試験」として認められます。だから多くの大学は、すでに実績のある試験をそのまま採用する方が合理的だと判断する。結果として、どこも似たようなリストになるわけです。
英語試験を受けなくても入学できる?
意外と知られていないのですが、英語試験のスコアを提出しなくても、大学の英語要件を満たせるケースがあります。
たとえばドイツの高校卒業証書に含まれる英語の成績、英語圏の国での在住・就労経験、特定の国籍など、認められる代替手段は実はかなり多い。「IELTSを受けなければ入学できない」というのは、必ずしも正しくないんです。
エージェントに相談すると、ほぼ必ずIELTSかPTEを勧められます。でもそれは、試験を受けさせることがエージェントにとっても分かりやすいから、という側面もあります。自分の状況が代替手段に当てはまる可能性があるなら、大学に直接確認してみる価値は十分あります。
ただし一つ注意が必要です。大学の英語要件を満たすことと、学生ビザの英語要件を満たすことは、別の話です。両方に英語力の証明が必要ですが、使える基準がまったく異なる場合があります。大学はOKでもビザがNGになるケース、またはその逆も起こりえます。この点については、また別の機会に詳しく解説します。
IELTSが「基準」になった理由
英語試験といえば、まずIELTSの名前が挙がります。なぜか。それは単純に、最初に存在したからです。
もともとIELTSは、イギリス文化振興会(British Council)との深い歴史的つながりの中で生まれました。かつて留学を希望する学生は、地元のイギリス大使館や領事館に出向いて英語力を証明するテストを受け、それから留学先に向かっていたのです。やがてそれが学生ビザの審査とも連動するようになり、IELTSは国際学生と移民の英語力を測る「標準」として世界中に定着しました。
需要が供給を上回るにつれて他の試験も登場しましたが、新しい試験が登場するたびに必ず問われたのが「IELTSで言うと何点相当?」という換算の問いでした。IELTSが事実上の「ものさし」になっていたんです。
今でもオーストラリアの大学に出願すると、条件付き合格の英語基準はIELTSのスコアで提示されることがほとんどです。他の試験を使う場合でも、「IELTSの6.5相当」という形で換算されます。この構造は今後もすぐには変わらないでしょう。
「一石二鳥」を狙うべき理由
大学入学とビザ申請、両方の英語要件を一つの試験でクリアできるなら、それが一番効率的です。彼は「できるなら一石二鳥を狙うべき」と言っています。試験の準備には時間もお金もかかります。一回の試験で二つの要件を同時に満たせるなら、その分のコストが丸ごと浮く計算です。
ちなみに「一石二鳥(kill two birds with one stone)」は、英語の試験でも頻出の表現です。学術的な文脈で自然に使えると、スピーキングとライティングの両方で高得点につながります。英語の試験勉強をしているなら、こうした慣用表現を意識して覚えておくことも、立派な対策の一つです。
試験選びは、スコアを取ることだけを考えがちですが、ビザとの関係、コスト、準備期間、自分の得意な試験形式など、複数の観点から判断することが重要です。次の第12話では、「結局どの試験が一番受かりやすいのか」を彼が本音で語ります。

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